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!御注意下さい!
【八王子の方言(八王子弁)】と名を付けてはいるものの、八王子の一集落で生まれ育った人間の内の「ひとり」である祖母の口癖を集めただけですので、すべてが『八王子全土で使われている方言』と言える根拠は全く御座いません。『方言でも何でもない、祖母の造語』が混ざっている可能性も捨てきれませんので、その点ご了承の上お付き合いください。また、言語に関する専門知識が皆無の人間によって纏められた為、勘違いや思い違いが有る可能性が大いに御座います。つまり、八王子中を調査した訳でも無く、素人が趣味の一環で制作した物ですので、【八王子の方言(八王子弁)】として学術的に御利用頂くのは絶対にお止め下さい。ただし、八王子の一地域の方言を話す一個人の資料として御参考頂く分には一向に構いません。お役に立てます様でしたら、どうぞ御自由に御活用くださいませ。(引用される場合など、事前に御連絡を頂く等のお気遣いは不要です。)
※2011年6月12日追記:
祖母への調査を開始した所、「おじいさんが良く使って言っていた」「近所の人が使って話していたのを聞いた事がある」と祖母が証言する、【祖母の人生の中では使われて来なかった八王子弁】が多数出て来ました。“祖母の口癖を集めた”との文句を前提にした当資料ですが、しかし、八王子から一度も離れずに住み続けて来た祖母の記憶に残っている時点で、それらも「八王子弁」であると見なし同等の扱いで区別せずに掲載して参ります。祖母が生まれた1920年代以前の村民が使っていた「八王子の方言」を御紹介している部分も有ると言う事で、ぜひ、お楽しみ頂ければ幸いです。








 

八王子の方言

〜祖母(大正生まれ)の話し言葉〜

 

助詞


〜八王子弁のイントネーションについて〜

決定的な特徴は
文末(助詞 )に高いアクセントを取り発音する事です。
分かり易く御説明しますと、
「俺はやってない!やってないよぉ!」
と刑事に訴えている時の音程に近いです。


※「〜で。」「〜でえ。」「〜な。」「〜なあ。」「〜よ。」「〜よう。」「〜とよ。」


ご利用の際はぜひお試し下さい。

尚、助詞以外にも標準語とは違うアクセントを取る単語が多々あります。
音程を変換する能力を身に付けられたら、都度ご紹介して行きたいとは思っております。




*助詞に現れる八王子弁



「〜で」=「〜ぜ」
「〜でえ」=「〜ぜ」
「踊る」「恥だ」などの、「〜ぜ」の意味。用法は「〜ぜ」と全く同じです。
イントネーションが標準語の「〜ぜ」の用法と違い、
  常に
「で」「でえ」に高いアクセントを付けて発音します(相手に訴えかける感じのイントネーション)。
  標準語の「〜ぜ」のように、「ぜ」を低く発音するイントネーションでは使いません。

  使用例:「ほっつきあるってねえで(うろつき歩いていないで)
                             早く けえれよ!
(帰れよ!)
                                    もう 夜だあ
でえ(夜だぜ!)
      /「今 行ったあのが(行ったのが=走り去ったのが)
         奥さんとこに
(奥さんの家に) 荷物 持ってったあ(荷物を持って行った)
                                              車だあ
(車だぜ)
        「あによ!
(何よ!) ほいじゃあ(それでは)
            今 おっかけやあ
(追い駆ければ)
                おっつくかもしれねえから
(追い付くかもしれないから)
                   ハンコ持って 行って来るだあ!
(行って来るです!=行って来ます!)
      /「よう!(ちょっと!)
           その ハサミは
まだ 使うだあでえ
(使うですぜ=使いますぜ)
              かたさねえで
(片付けないで) そけえ(そこに) 置いといつくれ(置いといてくれ)
      「いいだんべ(いいだろう=いいでしょう)
          こうして はっつけとくだけで
(貼り付けておくだけで)
             虫よけに 効くんだあ
(効くのだぜ)
                            虫ったってよ
(虫と言ったってさ)
                               おめえの事じゃあ ねえ
(お前の事ではないぜ)
      /「覗いちゃあ みたけんど(覗いては みたけれど)
             冷蔵庫の中になんかあ
(冷蔵庫の中になんか)
                    はいっちゃ
(入っては) いなかったでえ
          いってえ
(一体) どけえ(どこへ) しまっちまったのよう(仕舞ってしまったのよ)
                  あの印鑑が ねえと
(無いと)
                       金が 下ろせねえじゃんかなあ!
(下ろせないではないかな!)

      /「俺なんかはよ(俺なんかはさ)
           お父さんと一緒に もう 10回は コーヒーカップに 乗ったあ
でえ(乗ったぜ)
      /「こりゃあ(これは) 見た感じより 重い
          腰でも 悪くしちゃっちゃあ
(悪くしてしまっては) こまっからよ(困るからさ)
                                          きいつけて
(気を付けて) 持て」
      /「おめえ(あなた) 随分と ほおが(頬が) 赤いでえ
            口紅でも 塗ったあみてえじゃんか
(塗ったみたいではないか)

      /「年寄りべえで(年寄りばかりで) こっちゃあ(こっちは) 静かだあ(静かだぜ)
                    みんな いきい するので
(息をする事で) せえいっぺえだ(精一杯だ)
      /「そんな ひでえ事件が(酷い事件が) あったなんて
          あたしは 聞いたこたあ
(聞いた事は) ねえだあでえ
(ないですぜ)
                                 いってえ
(一体) 何時の事よ(何時の事さ)
      /「触るな って 言われたあから(言われたから)
            あたしは 指一本 触れちゃいねえ
(触れてはいないぜ)
      /「むこうっかたのはよ(向こうの方のはさ)
           まだ とるにゃあ
(採るには) 早過ぎやしねえか?(早過ぎはしないか?)
         こっちっかたの
(こっちの方の) 熟れてんのと比べっと(熟れているのと比べると)
                       
まあだ(まだ) ちょいっと(ちょっと) 青いだあ
でえ(青いですぜ)
      /ほんとに 23か?(23センチか?)
         あんだか
(何だか) 随分と 窮屈だあでえ
(窮屈ですぜ…)

            …ああ、 靴下を 重ねて 履いてっからか
(履いているからか)
              1枚っつ
(一枚ずつ) ぬぎゃあ(脱げば) 丁度よかんべな(丁度良いだろうな)
      /「たぶんだあでえ
(多分だぜ)
         確か こっから
(ここから) ごじっぽ(50歩) あるってった所に(歩いて行った所に)
                            カプセルを 埋めたあはずなんだ
(埋めたはずなのだ)
      /「3時間 並んでよう(並んでさ)
               やっと 買えたあのは
(買えたのは)
                        これきりだあ
(これきりですぜ)
      /「会社の為に
           あんなに 働いてくれたあ人は
(働いてくれた人は)
                              他に いねえやな
(いないよね)
        「ほうよう!
(そうよ!) それなのに だあでえ
(それなのに だぜ)
          退職金も はらあねえで
(払わないで) 首にしちまうなんて(首にしてしまうなんて)
              どうすやあ
(どうすれば) そんな 鬼みてえな事が(鬼みたいな事が)
                                       できっかなあ!
(出来るのかね!)
      /「こうして むきゃあ(剥けば) 無駄なく 食べられるでえ

      /「プリンを だあでえ
(プリンを だぜ)
               バケツで 作ったんだと
(作ったんだって)




「〜な」=「〜な」
「〜なあ」=「〜な」

★「踊ったなあ」「もう踊る」などの、「〜な」の意味。用法は標準語と全く同じです
★イントネーションが標準語の「〜な」と違い、
  常に
「な」「なあ」に高いアクセントを付けて発音します(標準語の音程よりも高いです)。
  使用例なあ(ね?) うまいだんべえ?(美味いだろう?) ※同意を求める「なあ」
      /「暇が ありゃあ(あれば) あたしも 行きてえなあ(=行きたいな)
      /「一緒に 行きてえよなあ(=行きたいよね)
      /「弱ったなあ(=弱ったね)
      /「ほうだあ(そうだな)(=そうだな)
      /「ほうだなあ(そうだな)(=そうだよね)
      /「危ねえから(危ないから) 近寄るなあ(=近寄るのではないよ)
      /「お父さんの わるっくちなんか(悪口なんか) 言うなあ(=言ってはいけないよ)
      /「良く遊び歩くなあ
      /「あそこの店で 安かったんべえ(安かったのだろうな)
      /「あたしは まだ ボケちゃあ(ボケては) いねえだあなあ(=いないですよね?)




「〜べえ〜」=「〜ばかり〜」 ※範囲の限定
「〜べえで〜」=「〜べえ+で〜」=「〜ばかり+で〜」=「〜ばかりで〜」 ※範囲の限定
「踊ってばかりいる」「踊ってばかりで歌わない」などの、
  範囲の限定を表現する「〜ばかり〜」「〜ばかりで〜」の意味。

★用法は標準語の「ばかり」「ばかりで」と同様ですが、
  「〜べえ〜」「〜べえで〜」の前に動詞を置く場合は『連用形』のみが対象となります。
  (動詞の『ウの段で言い切る連体形』に「べえ」を繋げると、
   助動詞「〜だろう」を意味する八王子弁の
「〜べ」「〜べえ」の表現になってしまいます)。
  また、「〜べえ〜」「〜べえで〜」の前に形容詞を置く場合も『連用形』が対象となります
  (形容詞の『「〜い」で言い切る連体形』に「べえ」を繋げると、
   助動詞「〜だろう」を意味する八王子弁の
「〜べ」「〜べえ」の表現になってしまいます)。
「〜べえ〜」の後ろには、必ず動詞を含んだ連語が続きます。
  標準語では「踊ってばかり。踊ってばかりよ。」などの様に文を終わらせる事が出来ますが、
  八王子弁では助詞「ばかり」を意味しての
〜べえ。」「〜べえよ。」という言い方自体が存在しません。
  (「〜べえ。」「〜べえよ。」で文を終わらせてしまうと、
   助動詞「〜だろう」を意味する八王子弁の「〜べ」「〜べえ」の表現になってしまいます。)

  ですので、標準語の「踊ってばかりいる。踊ってばかりいるよ。」の様に
  八王子弁では「踊ってべえいる。踊ってべえいるよ。」と表現する事になります。

「〜べえで〜」の後ろには、標準語「ばかり」と同様に文を続けて置くか、
  助詞「な」「なあ」「よ」「よう」を付けて文を終わらせる事が出来ます。
  (「〜べえでとして終わらせる事はできません。)
★標準語であれば「〜ばかり〜」に連なる事の出来る品詞や活用形であるのに、
  八王子弁「〜べえ〜」には連なって表現する事がない(出来ない)物が多々有ります。
  そのような物は標準語の「ばかり」を使って八王子弁を構成させます。
  (例えば、「踊べえで観ねえ」「踊ってべえで苦しべえだ」「踊らねえべえ興味がねえ」
   という八王子弁は存在しないので、
   「踊るばっかりで観ねえ」「踊ってべえで苦しいばっかりだ」「踊らねえばかりか興味がねえ」
   と表現します。)
「〜べえ〜」「〜べえで〜」のイントネーションは、「べえ」に高いアクセント取って発音します。
  使用例:「毎日 イモべえ 食ってるだ(食ってるです=食ってます)
      「“もしもし”べえ 言ってら(言ってるわ)
          こっちの 声が 聞こえねえ
(聞こえない) みてえだ(みたいだ)
      /「さっきっから(さっきから)べえ してえるじゃんか(しているではないか)
                               おめえ
(お前) でえじょうぶかよ(大丈夫かよ)
      /「たまには こっちっかたも(こちらの方も) 磨いてくれよう(磨いてくれよ)
           そっちべえ
きれいんなって(綺麗になって) バランスが わりいやな(悪いわな)
      /「日焼けしてもよ(日焼けをしてもさ)
           赤くべえ
なって 黒くならねえのよ(黒くならないのよ)
      /「早さべえ 競ってるらしいで(競っているらしいぜ)
             はやけや いいって もんじゃ ねえよな!
(早ければ 良いって 物では ないよね!)

      /「あの犬は ヨダレを 垂らしてべえ いるなあ」
      /「本を 読んでべえいて 目が 疲れねえのかよ(疲れないのかよ)
                           いちんちじゅう じゃんか
(一日中 ではないか)

      /「会館には カラオケが ねえからな(無いからね)
              アカペラでべえ
歌ってるだ(歌ってるです=歌っています)
      /「高校に へえってからは(入ってからは)
           山田さんとべえ
あすんでるよう(遊んでいるよ)
      /「おじいさんが 夢にべえ
出て来るんだあよ(出て来るのだよ)
                                   不思議だあな
(不思議だな)

      /「ここんとこ(ここのところ) おかぞが(おかずが) 野菜べえで(野菜ばかりでさ)
                        その内 ウサギにでも なっちまいそうだ
(なってしまいそうだ)
      /「いつも 貰ってべえで すいませんね(済みませんね)



「副詞+べえ〜」=「〜ばかり〜」 ※おおよその数量・程度
★「少しばかり踊る」などの、「〜ばかり〜」の意味。
  おおよその数量・程度を意味する標準語「ばかり」と同じように、「〜べえ〜」の前に来るのは
  数量を示す副詞になります。
★アクセントは
「べえ」に高く取って発音します。
  使用例:「ちいっとべえで いいよ=「少しばかりで いいよ」
      /「ちっとべえ 貰ってけえるかな(貰って帰るかな=貰って帰ろうかな)

【余談】
「副詞+べえ〜」の表現で祖母が良く使うフレーズは、
「少しばかり」を意味する
「ちいっとべえ」「ちっとべえ」だけしか有りません。
その他の副詞を当てたフレーズが八王子弁に存在するのかどうかは不明です。




「〜よう」=「〜よ」
★「なんと愉快な踊り」「恥ずかしいから見ないで下さい」などの、「〜よ」の意味(感嘆、呼びかけ)。
★標準語「〜よ」の全てが八王子弁「〜よう」で表現される訳ではなく、
  標準語の「〜よ」も「〜よう」と共に会話中で使われます。
★イントネーションが標準語の「〜よ」の用法と違い、
  標準語「よ」よりも高い音程で「よう」を発音します(常に相手に訴えかける感じのイントネーション)。
  また、標準語で表現される、「よ」を低く発音するイントネーション「〜よう」では使われません。
  使用例:「全くよう
         どこもかしこも 潰れちまってなあ
(潰れてしまってな)
                         あんなんじゃあ
(あんなのでは) もう
                             商店街たあ
(商店街とは) 呼べねえな(呼べないな)
      /「ほうだよう(そうだよ)
          大空襲ん時にはよ
(大空襲の時にはさ)
              おじさんは 位牌を かけえて
(抱えて) 逃げたんだあで(逃げたのだぜ)
      /「あんだよ(何だよ) 先い(先に) 言ってくれよう
          薄めねえで
(薄めないで) 半分 飲んじまったよう(飲んでしまったよ)
      /「ああ 困ったよう
              こけえらに
(ここいらに) 便所は ねえかな(無いかな)
      /「そんなあ(そんな) 値段で 売ってたの!? 安いよう!」
      /「一緒に選びに行こう ったって(一緒に選びに行こう と言ったって)
          こかあ(ここは) 日本じゃねえんだからよう(日本ではないのだからよ)
                 荷を置いたまんま 席を 離れちゃっちゃあ
(離れてしまっては)
                    盗られちまうだあよう
(盗られてしまうですよ=盗られてしまいますよ)
      /「まだ ボケちゃいねえよう(ボケてはいないよ)
      /「もう 残りが 少ねえだあよう
(少ないですよ)
          おちつかねえから
(落ち着かないから) 補充しとくべ(補充しておこう)
      /「籠から出して あすんでも(遊んでも) いいけんどよ(いいけれどよ)
           ピーちゃんを 外へは おっぱなすなよう
(放すなよ)

                      あっ!
                        言ったさきっから
(言ったさきから=言ったそばから)
                                     おっぱなすなよう
!!
(放すなよ!!)
      /「カメさんよう
            どけえ
(どこへ) 行くのよ」
      /「肥だめに おっこっちまっただあよう
(落ちてしまったですよ=落ちてしまいましたよ)
      /「感謝しろよう
          おじいさんの おかげで 今が あるんだあからよ
(あるのだからよ)
      /「止せよう
           4人も おっかぶさったら
(被さったら)
               兄ちゃん
(俺) ぴっちゃんこに(ぺっちゃんこに)
                     なっちまうじゃんかなあ!
(なってしまうではないかな!)
                                              止してくれよう!」

      /「おめえよう(お前よ)
                しそっぱが
(紫蘇の葉が) ほしけやあ(欲しければ)
                         もいで 持ってけよ
(もいで持って行きなよ)




「〜とって」=「〜とて」(「〜といって」の意味でのみ使う。)

「踊れるといって喜んでた」「踊るなといってコーチが怒っていた」などの、「〜といって」の意味。「〜とて」には他に、「〜でも」「〜だって」「〜といっても」「〜としても」のような意味がありますが、八王子弁の「〜とって」は「〜といって」の意味だけを表現します。使い方は標準語と同じです。

使用例:「バス停ひとつ走ろうとって、無茶したらしいで「ここに住むとって、寝床こしらえてらあ」

     「アンジャッシュに貰ったあとって、自慢してべえ「便利だあとって、みんな使ってんな」

     「ご飯粒が少ないとって、隠れて文句言ったあ」「知らねえとって、しらばっくれてやった」

     「ミカンらしいとってくれたけど、こりゃデコポンだよなあ」「お前にとって、預かってきた」

 

 

「動詞の連用形+や(あ)」

「動詞の連用形・五段活用(一部を除く)+ゃ(あ)」

=「〜(し)は」 ※後ろに必ず「〜しない」と続きます。

「踊りを休みはしない」「気に掛けはしない」などの、「〜(し)は」の意味。動詞の連用形であれば全て「〜や(あ)」と続けて言う事ができますが、さらに五段活用動詞の場合は「〜ゃ(あ)」と言う事もできます(ただし、五段活用動詞でも、最後の文字が「あ行」で終わる場合は「〜ゃ(あ)」では繋げません。使えるのは「〜や(あ)」のみです)。「〜や(あ)」「〜ゃ(あ)」の意味は同じですが、「〜や(あ)」の方が丁寧な言い方です。後項の【動詞・形容詞の仮定形+や(あ)/ゃ(あ)】(「〜(すれ)ば」「〜(けれ)ば」)のと全く同じ発音・形態なので混乱しそうですが、どちらの意味で使っているかは文脈で簡単に判断できます。「〜(し)は」の意味で使う時は必ず「しない」と否定的な言葉が続きます。【注8】

使用例:「いっくら(いくら)待ってもバスが来しねえで 日が暮れちまった」

     /「電話なんか ししねえよ おめえに用なんか ねえもの」

     /「まさかバイクの後ろに子供なんか乗せしねえだろ?危ねえから ぜってえ(絶対)よせ」

     /「捨てしねえ はずなんだけどなあ どこへ やっちまったんだんべ」

     /「着物なんか もう着しねえけんど うっちゃっちまう(捨ててしまう)のも惜しいな」

     /「落ちしねえかと あたしゃヒヤヒヤして肝を潰したよう もう登んねえでくれ」

     /「誰か ここに置いといた あたしの饅頭を 食いしねえ?」(「あ行」で終わる五段活用)

     /「あのくれえじゃ 死に(死にゃあ)しねえんだと」(五段活用)

     /「転び(転びゃあ)しねえよ けつまづいただけだあ」(五段活用)

 

 

「助動詞の連用形+や(あ)/ゃ(あ)」=「〜は」 ※後ろに必ず「〜ない」と続きます。

「大舞台で踊りたがりはしないよ」「舞台に立たせはしない」「〜は」の意味。使い方は標準語と同じです。助動詞によって「や(あ)」「ゃ(あ)」のどちらかを使います。ただし、「たがり」のみは両方使えます(以下参照)。「や(あ)」「ゃ(あ)」の意味は同じもので、表現に善し悪しはありません。「や(あ)」の場合、後項の【助動詞の仮定形+や(あ)/ゃ(あ)】(「〜れば」)と全く同じ発音・形態なので混乱しそうですが、どちらの意味で使っているかは文脈で簡単に判断できます。【注8】

使用例:「(見)させやあ(しないよ)」(使役「させ」+「は」)

     「(まさか町中に知ら)しめやあ(しないだろ)」(使役「しめ」+「は」)

     「(察)せやあ(しねえもの 鈍感だから)」(使役「せ」+「は」)

     「(食べ)たが(しないよ そんな物)」(希望「たがり」+「は」)

     「(あれの)ようゃあ(なりたくねえ)」(推量、比況「ように」+「は」)

     「(こええ(怖い)から下り)られやあ(しねえよ)」(受身、可能、自発、尊敬「られ」+「は」)

     「(誰にも聞か)やあ(しねえよ ビクビクすんな)」(受身、可能、自発、尊敬「れ」+「は」)

 

 

「助動詞・形容詞の連用形+か」=「〜くは」 ※後ろに必ず「〜ない」と続きます。

「踊りをやめたくはない」「引き際が美しくはない」などの、「〜くは」の意味。使い方は標準語と同じです。

使用例:「(本当は会い)た(ねえんだ)」(助動詞・希望「たく」+「は」)

     「(おめえ)らし(ねえな 菓子も食わねえの?)」(助動詞・推量「らしく」+「は」)

     「細かねえか?一円ぐれえ(ぐらい)減ってたって 死にゃあしねえよ」

     「別に羨ましねえけど どんなもんかなあと思って聞いただけ」

     「こんな年になれば 誕生日が来たって 特別 めでたねえやあ」

 

 

「動詞・形容詞の仮定形+ゃ(あ)」

「動詞の仮定形・上一段、下一段活用+や(あ)」

「形容詞の仮定形+や(あ)」

=「〜(すれ)+ば」「〜(けれ)+ば」

踊れば元気になる」「踊る事をよせば治る」「苦しければ言え」などの、「〜すれ+ば」「〜けれ+ば」の意味。動詞・形容詞の仮定形であれば全て「ゃ(あ)」と続けて言う事ができます。加えて、動詞の上一段・下一段活用の場合と、形容詞は「や(あ)」と言う事もできます。「や(あ)」「ゃ(あ)」の意味は同じですが、「や(あ)」の方が丁寧な言い方です。「ゃ(あ)」を使う時には、その直前に来る単語(仮定形)の一番最後の一文字を変換させて「きゃあ」「びゃあ」「みゃあ」などと表現します。※【注9】上一段・下一段活用で「〜や(あ)」を使う時には、その直前に来る単語(仮定形)の最後の一文字「〜れ」を「や(あ)」に置き換えて言います。前項の【動詞の連用形+や(あ)/ゃ(あ)】(「〜(し)は」)の「や(あ)」「ゃ(あ)」と全く同じ発音・形態なので混乱しそうですが、どちらの意味で使っているかは文脈で簡単に判断できます。【注8】

使用例:「親切な人だったな 名前でも聞きゃあ良かった

     /「この上っ張りを 脱ぎゃあ いいんだな ああ 涼しくなったよう」

     /「梅干しを漬けた後にな 干しゃあ 皮がやっこく(柔かく)なるんだあ」

     /「勝ちゃあ いいってもんでもねえけど あの賞品は魅力だな

     /「コロッと 死にゃあ 楽でいいけどな そう上手くは行かねえな」

     /「あの猫は あたしが呼びゃあ 寄って来るんだ おもしれえ(面白い)な」

     /「この本を読みゃあ 為になるって言われて読んだけど 意味が分からねえ」

     /「そんな噂すんな 奴の耳に入りゃあ 怒鳴り込まれるぞ」

     /「もっと早く来りゃあ(くりゃあ)まんじゅうが残ってて食べれたのに」

     /「折って こうすりゃあ 良かんべ まだ下着が めえてる(見えてる)か?」

     /「そんだけ高けりゃあ(高けやあ) よっぽど旨い寿司だったんだんべ」(形容詞)

     /「八十も過ぎりゃあ(過ぎやあ)な 友達も兄弟も減って つまんねえよ」(上一段活用)

     /「ほうか(そうか) 2種類の味噌を混ぜりゃあ(混ぜやあ) 旨くなんのか」(下一段活用)

 

 

【注8】

「や(あ)」「ゃ(あ)」で、「〜は」(連用形)と「〜ば」(仮定形)の両方使って文を作ると次のようになります。「丸太んぼのまんまじゃあ 燃えやあしねえよ それが燃えやあ大したもんだあ」(丸太のままでは燃えしないよ それが燃えれば大したものだ)。

 

【注9】

「〜ゃ(あ)」の直前に来る一文字は、前の単語(連用形・仮定形)の最後に来る文字によって決まります。最後の文字が、【か行】→「きゃ(あ)」、【が行】→「ぎゃ(あ)」、【さ行】→「しゃ(あ)」、【た行】→「ちゃ(あ)」、【な行】→「にゃ(あ)」、【ば行】→「びゃ(あ)」、【ま行】→「みゃ(あ)」、【ら行】→「りゃ(あ)」、となります。

 

 

「助動詞の仮定形+ゃ(あ)/や(あ)」=「〜れば」

「彼を踊らせれば素晴らしい」「君が口を出さなければなお良い」などの、「〜れば」の意味。助動詞によって「や(あ)」「ゃ(あ)」のどちらかを使います。ただし、両方使えるものもあります(以下参照)。「や(あ)」「ゃ(あ)」の意味は同じもので、表現に善し悪しはありませんが、「ゃ(あ)」「や(あ)」も両方使える助動詞(以下参照)では、「〜や(あ)」の方が丁寧な言い方になります。「ゃ(あ)」「や(あ)」の場合、前項の【助動詞の連用形+や(あ)/ゃ(あ)「〜は」の「や(あ)」「ゃ(あ)」と全く同じ発音・形態なので混乱しそうですが、どちらの意味で使っているかは文脈で簡単に判断できます。【注8】

使用例:「(見)させゃあ/させやあ(喜ぶぞ)」(使役「させれ」+「ば」)

     「(知ら)しめゃあ/しめやあ(いいんだ)(使役「しめれ」+「ば」)

     /「(察)せゃあ/せやあ(大したもんだ)(使役「せれ」+「ば」)

     「(食い)たけゃあ(手伝え)」(希望「たけれ」+「ば」)

     /「(食べ)たがゃあ(やったっていいんだよ)」(希望「たがれ」+「ば」)

     「(会わ)なけゃあ(よかった)」(打消「なけれ」+「ば」)

     /「(早く植え)ゃあ(花の時期が終わっちまうでえ)」(打消し「ね」+「ば」)

     /「(あの辺りへ下り)られゃあ/られやあ(ミョウガをいっぺえ(いっぱい)摘めんのに)

       (受身、可能、尊敬、自発「られれ」+「ば」)

     「(こんなことヤツに聞か)りゃあ/れやあ(広まって面倒な事になんぞ)」

       (受身、可能、尊敬、自発「れれ」+「ば」)

 

 

「〜ちゃ(あ)」=「〜ては」

「集まっては皆で踊った」「集会を認めてはいない」などの、「〜ては」の意味。使い方は標準語と同じです。

使用例:「走っちゃあ危ねえから ゆっくり行け」「本人は知っちゃいねえだんべ」

     「すぐには貸しちゃあくれねえんだと「人と比べちゃあ不満べえ言って損な性格だな

 

 

「じゃ(あ)」=「では」

「スリッパでは踊れない」「では裸足で踊れ」などの、「では」の意味。使い方は標準語と同じです。

使用例:「おい!走るんじゃあねえよう!転ぶぞ!」じゃあよう キュウリを一本くれ」

     じゃあな 気を付けて帰れよ 自転車じゃあ すぐ家に着くだんべ」

     「今時分に出掛けたんじゃあ どこも混んでて 大変だったろう

     じゃあ言うけんどよう おめえだって 言う程の男前って訳じゃねえじゃねえか

     「山田さんとは お茶飲んじゃあ 人のウワサしたり 歌うたったりして 楽しかった

 

 

「〜にゃ(あ)」=「〜には」

「僕には踊りがある」「オーディションには受かったのか?」などの、「〜には」の意味。使い方は標準語と同じです。

使用例:「ここいらにゃあ スーパーが ひとっつも(ひとつも)ねえで 全く不便だあよう

     夕飯は まだ だけんどな 風呂にゃあ入ったよ」「あいつにゃあ もう うんざりだ」

     「猫に やるにゃあ もったいねえから 結局自分で食ったよ

     「電気屋にゃあ 修理をずいぶん前に頼んだんだあでえ 忘れちまったのかな

     「寝るにゃあ 早すぎらあ」「起きるにゃあ 早すぎらあ」

 

 

「〜くれえ」=「〜くらい」

「逆立ちで踊るくらい訳は無い」「そんな自慢をするのは君ぐらいだ」などの、「〜くらい」の意味。使い方は標準語と同じです。

使用例:「2〜3百万ぐれえでメソメソすんな!←オレオレ詐欺の電話に対応した祖母の実際のセリフ。

     「あん時(あの時)ぐれえ困った事は無かったな」「そのくれえで止めとけよ」

 

 

「〜っけか?」=「過去を思い出す終助詞【け】+疑問の終助詞【か】?」=「〜っけ?」

「あの舞台で踊ったっけ?」「あれって舞台だったっけ?」などの、「〜っけ?」の意味。使い方は標準語と同じです。一般的には、単純に「〜っけ」に疑問符「?」をつければ同様の意味が成立する言葉ですが、八王子弁では「〜っけ?」と「け」で言い終わる使い方はあまりしません。疑問を投げかける時は「〜け?」と言い、単に思い出話をする時は「〜っけ」の後ろに「なあ」を付けて「〜っけなあ」と言います。ちなみに、自問する時は「〜っけかなあ?」と言います。

使用例:「これって煮るんだっけか?生で食っちまったよ「どこへ しまったっけかなあ?

     「実家ってこんな山奥だったっけか?「おめえが探してた芋は見つかったんだっけか?

 


「〜とよ」=「〜とさ」
使用例:「あの人も 知らねえんだとよ「どうしても 明日までに 金が いるんだとよ
    /「来週 帰って来るとよ「あの人は公務員だったから うんと(沢山)年金が出るとよ
    /「トンカントンカン うるせえだんべ(うるさいだろう)
          ひがしっかた
(東の方)だけでも
            今日中に 終わらせちまわねえ
とよ(終わらせてしまわないとさ)
                           お隣さんに 迷惑だあから
(迷惑だから)よ」



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