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>2009年5月28日 ジャッシー様




(東京都八王子市西部地域の方言)



〜祖母(大正生まれ)の話し言葉〜
付録









方言について頂いたメッセージ

皆さまのお便りと当方からのお返事を掲載しております。






2009年5月28日(Thu) ジャッシー

【こんばんは】

はじめまして。甲府在住のおやじです。
最近、八王子の方言に興味をもちまして、本日、お婆さまの方言集を拝見して納得しました。といいますのも先日八王子にドライブに行った際、道に迷ってコンビニで尋ねたところ、20代後半とおぼしき女性の店員の方が「〜の前っかたです」と説明してくれたのでびっくり!!これは山梨(甲州弁)でもよく遣う言い方だからです。(え?都内なのにまさか方言?)…以来この言葉がずっと気になっていまして、本日、やはり方言だった(らしい)ことがお婆さまの方言集を見てわかった次第です。さらに驚きだったのはほかにも甲州弁との共通語がたくさんあること。たとえばものを縛る意味の「ひっちばる」という言い方は甲州弁でも普通に遣います。
今でも八王子方言は遣われているのでしょうか?甲州弁は荒い綺麗じゃない田舎っぽいという理由からか若い世代には敬遠されているようで少しさびしい気がします。でも私と身の回りの人の会話とかを確認するとまだまだ消滅することはないと思ってますが。

突然おじゃましました。ではまた。






2009年5月30日(Sat) はなふさ あんに

【「こんちは!」※祖母語(「こ」と「は」にアクセントを付けて語尾を上げる。)】

ジャッシー様、はじめまして。はなふさあんにです。
お返事が遅くなりまして申し訳ございませんでした。書き込みありがとうございます。

まあよう。八王子弁についての質問を貰っちまったあよう。ジャッシーさんてえ言うのはきっと奇特な人だんべえ。あたしなんかで上手く答えられべえかな?間違った事でも言っちまったらどうすべえ。(八王子弁。)

え〜…、八王子弁についてなのですが、ここでお答をしようと試みましたが偉く長文になってしまい、掲示板の書き込みレベルを超えてしまったので、後日「Q&A」ページの方で改めてお答えしたいと思います。お手数お掛けしますが今一度お訪ね頂けましたら幸いです。よろしくお願い致します。

ジャッシー様は甲府の方なのですね。出不精の私ですが、唯一「旅行に出かけてもいいかな」と思うのが山梨県なのですよ。八王子から近いと言う事もありますが、山中湖とか河口湖の辺りの空気が、子供の頃からとても好きなのです。冨士山が見えるからとか、別荘地だからとか、そう言うのでは無くて、あの辺りに居ると何故か凄く癒されます。こういうのを波長が合うと言うのでしょうか。
山中湖に白鳥が居ますでしょ?以前訪れた時、夫婦と子供の3羽が陸に上がって来ていて、それを間近で見たくなった私はソロリソロリ近づいたのですが、子白鳥の前で不覚にも足がもつれてヨロけてしまい、父白鳥に「オレの子供に何しやがる」とクチバシで威嚇され、食われそうになりました。そんな、バカバカしい事を一人でやっていても絵になる(自分で言うな)所とか好きです。

甲府には、昨年末に旅行しました。どうもお世話になりました。昇仙峡に初めて行ったのですが素晴らしいですね。本当に、仙人様を見た気がしました。温泉にも入って極楽極楽でした。温泉の出る所に住んでいらっしゃるなんて、ジャッシー様が本当に羨ましいです。

それでは、「Q&A」ページの方でまた…。
この度はコメントを頂きまして、本当にありがとうございました。




〜以下、「Q&A」ページから転載〜


 『はなふさ あんに の Q&A』
 ジャッシー様より、八王子弁についてご質問を頂きました。

20代後半の店員さんがコンビニで「〜っかたです。」って言ってましたか!
ジャッシー様、それは珍しいと思います。珍事です! と、私は大袈裟に思います!(コラ)

まず先に申し上げて置きますが、
以下にこれからお答えします内容は、私の個人的見解でありまして、決して統計学的な性質の物ではございません。現在八王子市内で、八王子弁がどのように使われているのか、完璧に正確な現状は把握しておりませんので、間違った説明をしている可能性もございます。どうかその点ご了承の上お読み下さいませ。

では、お答えいたしますね。

基本的に八王子弁を話すのは戦前生まれの方々で、それでも「品の無い喋り」と言う理由から八王子弁を使わないお年寄りもいます。実際、私の祖母は同年代の友人から「そんな言葉を使うな」と良く叱られるそうです。祖母の子供たち(私の母や叔父など)も、祖母の「品位に欠けた八王子弁」を耳にすると、決まって顔を見合わせ苦笑いをします。祖母のように、人に何を言われようが気にしなかったり、他民とあまり接触が無く「八王子弁は評判が悪い」と言う認識の薄い人達が、八王子弁を使い続けていると思われます。

私の母(戦後生まれ)の世代になると、いわゆる「品の無い喋り」については全くしなくなります。女性が男言葉を使う事は絶対にありませんし(八王子弁は普通に女性が男言葉を使います)、「〜だんべえ」とか「〜でえ」とか「〜だあよう」とかを語尾に付ける話し方も先ずしません。ただ、名詞などで特に「品が悪い」とは感じない言葉は受け継いでいて、時々使う事があります。「〜っかた」がその一例に入りますね。ところで、母が「品が悪い八王子弁」を習得していないかと言うとそうではなくて、中学生の頃までは普通に八王子弁を話していたようです。ではなぜ現在は八王子弁を話さないのかと言うと、それは多感な時期の頃の苦い経験から来ている様です。高校時代、母が男子生徒に向かって「おまえ」と声を掛けたら(八王子弁で「おまえ」=「あなた」)「女のくせに男みたいな喋り方だな」と嫌悪されたらしいのです。高校と言うと地元を出て他市民との交流が始まる場所ですから、「八王子弁って口が悪いな!」という外からの素直な意見を聞けば、誰だって(特に女性は)使うのを止めるのでしょう。恐らくそんな理由から、八王子弁は衰退して行ったのだと思います。

私の世代(昭和後期生まれ)になると、もう、言語の習得時期に八王子弁は介入してきませんでした(ただし、「おっこちる」(落ちる)は標準語だと思って誰もが使っていましたけど…)。地元の小中学校に通いましたが、教師も友人達も皆、標準語(標準語に少し方言(「〜じゃん」等)が残った「東京弁」と言った方が正しいかもしれません)で生活を営んでいました。姉が小学生の頃、語尾に「〜べ」を付けて学友と話していた事が一時期ありましたが、それは八王子弁の「〜べえ」を取り入れたのでは無く、神奈川県等にかけて広く使われていた「〜べ」を流行りで真似した一種の遊びであって、純粋な八王子弁の喋りではありませんでした。私自身については、幼い頃から祖母の八王子弁を時々耳にはしながらも、それを「八王子弁」と言う特殊な物として理解し始めたのは恐らく成人後であります。それまでは特に気にかける事も無く、「時々おばあちゃんは私の知らない昔の言葉を使うなあ」くらいのあしらいで、つまり「昔の言葉=使えない言葉」的解釈ですから、私の社会生活には必要の無い物であり、習得には至らなかったのではないかと思います。ただし現在については、私もそれなりの長さを生きて来ましたから、祖母と母の「八王子弁」を知らず知らず吸収していて、使用頻度はかなり低いですが、時々「腹がくちくなった(お腹がいっぱいになった)」とか言ってしまいます。

詰まる所、八王子弁は現在、高齢者を中心とした一部の人達の間で使われているだけの状況で、若者に至っては「八王子弁という物がある事すら知らない」と言う人が大多数では無いかと思われます。勉強中も仕事中も遊歩中も食事中も、現代の八王子人は基本的に「東京弁」または「標準語」です。

さて、「20代後半の店員さん」についてですが、20代後半で八王子弁を喋れると言うのは恐らく、私のように、身近に70〜80歳代以上の八王子弁を話す方(貴重人物)がいるか、またはその貴重人物の方言を受け継いでいる方がいるのでしょう。30〜40歳代以前の方が八王子弁を使うのは珍しいですが、「〜っかた」と言うのは八王子弁の中でも比較的良く使われる「品のある」言葉ですし、常用していても不思議な事ではありません。

しかし、若い世代のコンビニ店員さんが接客中に八王子弁を使ったと言うのは、珍しいと思います。

母も私も、たとえ「品のある」八王子弁を口にするにしても、それは親戚の内々で使われる様なフランクな性質の物であって、社会人、ましてや都会的な店の接客業の立場で使おうと言う気にはなりません。地元色の強い商店などで、年配の御主人が八王子弁を使って接客している事はあると思いますが、基本的に丁寧に他人様の対応をする時は標準語を使います(祖母ですら)。
その「20代後半の店員さん」は、「〜っかた」を標準語と同じ感覚で使っておられるか、いや、ウッカリ言ってしまったのか、はたまたそのコンビニが地元民の集う憩いの店で、始終八王子弁接客なのか…。
私もそのコンビニに行って見たくなりました。笑。

八王子弁は確かに所々甲州弁と共通しますよね。現在、東京都は標準語圏(東京弁)地域ですが、元々は「江戸弁」があったように(今でも下町の生粋の江戸っ子が使用しているらしいです)、都内各地で独自の方言が使われていたと思います。それが標準語に取って替わり、段々と方言が消滅していった末の「東京弁」ですので、「東京には方言が無い」と断言する認識は誤りだと思います。恐らく八王子以外の都内でも、昔の言葉を使って暮していらっしゃる地元生まれのお年寄りが、まだ居るに違いありません。(願望)
地図を見て頂ければ分かる通り、八王子は都心から遠い田舎ですので、他の市区町村に比べて地元民同士の交流が比較的多く、ゆえに今でも方言が使われ残っているのでしょう。甲州弁混じりなのは、八王子が山梨との県境になっている山の麓にあり、ある意味「お隣さん」であって、不思議な事ではないですよね。山梨のみならず、八王子弁は、神奈川、埼玉、群馬、静岡の方言とも通ずる所がある様です。もちろん、東京の本家、江戸弁も見受けられますよ。
昔の人々が、えっちらおっちら山を越え、川を渡り、仕事や御嫁に行ったり来たり。言葉も行ったり来たりしたのでしょう。その頃は、今とは比較できないくらい、山の向こうからやって来た人々の方言に皆そりゃビックリしたでしょうね!来訪した色んな言葉の中から選りすぐって生まれたであろう八王子弁です。大切にしたいものです。

ジャッシー様は甲州弁をお使いになられるとの事。甲州弁も若い世代から消えつつあるのですか?さみしいですね。言葉は時代の流れと共に変化するものですし、好き嫌いの問題なので方言が排除されるのは仕方のない事ですが、その言葉を使って生きて来た人々にとっては、自身を表現する分身のようなものですから、せめて、いつか後世の人が、「こんな言葉があったんだ」と話の種にでもできるように、何か残せたらいいですね。






2009年5月31日(Sun) ジャッシー

【ありがとうございます。】

こんばんは。ご丁寧な回答をありがとうございます。僕が疑問に思っていたことをわかりやすくご説明いただき大変感謝しております。人的交流がまだあまりなかった時代は、方言もふつうに共通語として遣われていたのが、次第にユニセックスな遣われかた等が忌避されたりして衰退していった過程がすごくリアルに伝わってきました。山梨に比較的方言人口が多いのは、田舎だからでしょうし、高齢化が進んでいるからかもしれませんが、周囲を山に囲まれている地理的条件から人的交流が比較的乏しいせいもあるのかもしれません。

山梨に親近感を持っていただいてる由、とてもうれしく思います。富士五湖で波長が合うなんて素敵です。富士山麓(山梨では郡内と呼びます)は自然がきれいでいいところですし。
甲府にもいらしたんですね!昇仙峡は僕もよく行きますよ。僕はバードウォッチャーなので、野鳥を見に行きます。はなふささんも野鳥がお好きみたいですね。ご自宅のシジュウカラの写真とか。昇仙峡の渓流のところでは今の時期、オオルリという青くてとてもきれいな鳥がすごくいい声でさえずっているので、早起きして休日の朝食前にオオルリを見に行くのが最近の楽しみです。あと甲府市民の水がめの荒川ダムには冬になるとたくさんのカモが渡ってきます。オシドリなんかもいますよ。

僕は八王子が好きですよ。都会なのに自然が残っていて、いいところだと思います。旧市内の落ち着いた街並みも好きですが、南大沢の自然と調和した新しくてでかい街も好きです。最近はミシュラン効果もあって高尾山も賑やか(過ぎ?)なようですね。

国際的に折り紙つきの自然が残っていて、たくさんの人が住む八王子はいいですね。さらに方言を遣うおばあさまのようなかたがいらっしゃるのはすばらしいことだと思います。山梨でも昔は普通にいた「男ことばを遣うおばあちゃん」はあまり見かけなくなりましたが、方言にはひとを不快にさせない和み系の語彙もあるので、そういう言葉をていねいに遣って子供たちの世代に伝承していき地域文化の火を絶やさないようにしたいものです。

ともあれ、おかげさまでますます八王子に興味しんしんですよ。

ではまた。






2009年6月1日(Mon) はなふさ あんに

【甲斐がありました。】

ジャッシー様こんばんは。
ジャッシー様の疑問にお答え出来たようで、ホッとしました。私も、八王子弁について整理し考える機会を与えてもらい、とても感謝しております。外からの働きかけが無ければ、自分からは目を向けられない事ってありますものね。また何か、私でお助けできる事がありましたら何時でもおっしゃって下さいね。この度は本当にありがとうございました。

わーお。朝食前に昇仙峡へ野鳥を見に出かけるなんて…ジャッシー様の生活、絵になりますね!ジャッシー様が、望遠鏡片手に昇仙峡の岩に片足乗せて石原裕次郎みたいなキメポーズを取っておられるお姿が目に浮かびます…。(妄想)

オオ!そして「オオルリ」ですか!私、図鑑でしか見た事が無いのですが、なんと八王子市の「市鳥」なんですよ!私、市民なのに生で見た事無いってどういう事!笑。それにどちらかと言うと「コルリ」の方が好きです。図鑑でしか見た事無いんですけど!でもきっと生でウォッチングしたら、「オオルリ」だろうが「コルリ」だろうが、どうでも良くなるくらい感動するんでしょうね。瑠璃色の鳥、死ぬまでに一度はこの目で見てみたいものです。今の時期、私と生息地を共にしている野鳥は「オナガ」です。「ギャー!」だか「ギョー!」だか鳴きながら、集団でカラスと闘っています。ジャッシー様のような、バードウォッチャー的な知識は私には無いのですが、鳥の、あの一点をジーッと見つめ、(ている訳では無いのでしょうが)、何を考えているんだかサッパリ分からない冷ややかな目が、私は好きです。鳥達のユニークな動きを、より一層引き立てて見せてくれますからね。実は今日、マックへ食事に行ったのですが、駐車場で「セグロセキレイ」(恐らく)を発見しました。アスファルトの上で、無心に何かをついばんでいました。車が50cm横を通り過ぎようとしているのに、気にも留めず、必死に、無我夢中で、ついばんでいました。マックの駐車場ですから、ハンバーガーかポテトの屑が落ちていたのでしょうか…?小鳥までをも虜にするマックって、凄いです。

ジャッシー様の甲州弁が、お年を重ねるごとに磨きがかかり、昇仙峡一帯に神々しく高らかに響き渡りますよう、心より願っています(鳥がみんな逃げちゃうじゃん。ダメじゃん。)私も、祖母の八王子弁を可能な限り資料にして、そしていつか、タイムカプセルに入れて高尾山の何処かにコッソリ埋めてきますね!冗談です!お互い、地元方言の力になれるといいですね。

それから、「甲府の人が、おばあちゃんが方言を使い続けてる事を素晴らしいって言ってたよ!」って祖母に伝えて置きますね。きっと、「お礼に菓子折りでも贈ってやんべえ」とか言って、ヘラヘラ嬉しがると思います。この度は本当にありがとうございました。

それでは、この辺で。
その内また、「郡内」に行きたいです。
では、グンナイ〜。おやすみなさい。(コラ)


 






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